≪BL感想≫リスタートはただいまのあとで/ココミ

BL感想

ココミさん待望の新作コミックです!僕は連載当時読んでいなかったので(コミックス待ち派(^^)ご本人のTwitterで「新しいお話が掲載されます」と告知がある度に、読みたいけど・どうしよう・・・とウズウズ悶々していました(^^;

そして読んだ後の感想は、期待通りのほんわか、あったかいココミさんらしい作品でした。

あらすじ

何もない片田舎で生まれ育ち、高校入学を機に上京した狐塚光臣(25)は、会社をクビになり実に10年ぶりに帰郷した。昔と何一つ変わらない田舎町。しかし、昔と違っていたのは、近所の熊井のじいちゃんの家に養子として迎えられた同い年の大和との出会いだった――。
会社を立て続けにクビになり、どこか素直になれない光臣と、優しく人当たりのいい方言男子・大和のほっこり田舎BL!

http://www.c-canna.jp/c/item/82960029086160000000.html

光臣(つり目・ノンケ)と大和(方言男子・ノンケ)の距離が少しづつ縮まって行くのが丁寧に描かれていて、 気付いたらお互いにとって大事な存在になっている・・・

え、待ってノンケ同士なの?!せめて片方ゲイじゃないの?!ノンケ同士が恋に落ちるの?!

ストーリー&感想(※ネタばれ含みます)

物語は恋愛感情で揺れ動く二人の気持ちを描いただけでなく、 職を失くし田舎に帰ってきた光臣と、複雑な生い立ちが故に人を愛する事に戸惑いがある大和が、お互いに感化されながら成長していく様子が穏やかに描かれています。

二人が出会い徐々に友人として仲良くなっていくのを見てる中、最初に心が動かされたのは大和の大切なじいちゃんが倒れた時にそばで支えた光臣の優しさでした。笑って大和を励まし、怒って大和を庇おうとする、そんな事が出来る光臣は優しくて強い。第一話からグッと来ました。

その後、光臣はこの町で生きる決心をするも、簡単には認めてもらえず父親から家業を継がせる気はないと言われてしまい・・・それを見ていた大和が仕事を手伝って欲しいと連れて行った先は以前光臣がクビになった職場!大和め、謀ったな(笑)クビになった頃とは違う感情、今なら素直になれる、それは他でもない大和の影響、大和の支え。それに気付いた光臣は少しづつ大和の事が気になり始めます。本の帯にもあるけど、そう、先に意識しだしたのは光臣の方なんですよね。

寝てる大和のほっぺにキスをしたり、大和の高校時代の友人にヤキモチを妬いてしまったり、光臣の心臓が忙しく動く中、大和は何気ない会話の中で「俺は結婚しないから」ときっぱり言います。何か理由があるのか聞きたいのにいざとなるとはぐらかされてしまう、一歩踏み込ませない大和側の壁。光臣は淋しく感じ、大和は話せないでいる苦しみが描かれます。いったい何が・・・?

大和には生まれてすぐ公園のベンチに捨てられたという過去がありました。保護され施設で育ち、それが悲しいことか寂しいことかも分からず幼少期を過ごします。しかし嫌でも耳に入る心無い声に「自分は望まれなかった子で、かわいそうなんだ」と何をするにも引け目を感じ、愛を知らずに育った自分が愛を与えることは出来るのだろうかと思い悩みます。それでも、かわいそうと思われないように笑顔をつくる大和、「俺は結婚しないから」の言葉は人を愛せるか自信がない大和の壁だったんですね。

そんな自分とは違う、周りにいじられながらも愛を受け育った光臣に大和はいつしか惹かれはじめ、人に言われ初めて特別な存在になっている事に気付きます。かわいそうと思われるかもしれない、けど、光臣には聞いてほしい・・・そばにいても距離を保ってきた大和はある日、光臣にこう言います「俺の昔話 聞いてくれる?」

公園のベンチに捨てられていた事、いくつもの施設で育ってきた事、少しづつ話す横顔は光臣から見てどこかスッキリしているように見え、読んでいても二人の見えない壁がなくなる様子が伝わる素敵なシーンでした。

光臣に話した事で、自分と向き合う事を決心する大和。自分の戸籍を確認する為、捨てられていたベンチのあった東京へ向かいます、その隣には光臣が。「巻き込んでゴメン、光臣と一緒なら行ける気がしたんだ」と謝る大和に「わーったよ」と返す光臣。そして「いくらでも巻き込んでくれていいのに」と心の中で呟きます。

東京に着き役所で問い合わせるもすぐには分からず、待っている間不安から無口になる大和。その大和の手をそっと握る光臣。セリフはないけど、大和のホッとしている顔と光臣の男気が印象的でした。結局翌日まで掛かる事になり、光臣に帰るか尋ねると「最後まで見届ける」と一泊する事に。しかしホテルの空室はダブルのみ・・・

二人で一つのベッドに寝転がり、「何もない、何も起きる訳ない」と頭では分かっていても、いつか寝ている大和のほっぺにキスをした事を思い出し、心が爆発しそうな光臣。そんな時に大和がポツリと「なぁ、光臣 なんであん時キスしたんだべ?」と問いかけます。バレてた!どう言い訳すればいい?と焦る光臣。・・・でも、この気持ちは言い訳しないといけないものなのか?

言ってしまったら今まで通りにはいられない、でも大和が自分と向き合ったように自分も大和とちゃんと向き合いたい!葛藤するも光臣は大和への気持ちを打ち明けます。「お前のことが好きだから!」 愛に臆病な大和は、一緒に居たいと思ったら?相手の事を知りたいと思ったら?手を繋ぎたいと思ったら?キスしたいと思ったら?と、好きの気持ちがどういうものか一つづつ確認します。戸惑いながらも、光臣の気持ちが心地いいと答え、「もう少し、もう少し待って」と光臣を抱きしめます。 とても穏やかで素敵なシーン、何度も読み返しました。

翌日二人は戸籍を確認に行きますが、そこには何も書かれていない書類が。大和は「やっぱなんも書いてねえべ」と、そしてスッキリしたと笑います。せっかくだし自分が拾われた公園を見に行きたいと役所の人に尋ねると、何とその人は大和が拾われた時に立ち会っていた人だったのです。そして、真新しいタオルに包まれた赤ちゃんの傍らに「大和」と書かれたメモが挟まれていたと話してくれます。あなたの名前ですよ、と。

光臣は「愛情がなければ名前を付けたりしないんじゃないかな」と大和に声を掛けます。わが子を捨てた人の本当の気持ちは分かりません、でも大和がその後光臣に「名前を呼んで」とお願いし、それに応え名前を呼び合い抱きしめ合うシーンは涙ものです。

田舎へ帰る電車の中、大和は光臣の手を握りキスをします。驚く光臣に「俺にも愛せっかなぁ」と笑顔で尋ねる大和、「ああ」と答える光臣。多くの言葉はなくとも二人の心が繋がる最高のクライマックスでした。

正直、エロさはほぼ無いです(笑)でも、ノンケとかゲイとか関係なく人と人とが分かり合おうとして、お互いを想いあう姿が丁寧に描かれていて、ココミさんのほっこりする絵柄と言葉に癒されました。あとオマケのストーリーもグッと来ます。『小さな田舎町で出会った宝物。』帯にあった言葉は僕の中でも宝物になりました。

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